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コロナ禍の中、創造性に委ねてリードし、進化し、打ち勝とう

さる2月13日(2020年春学期)に、RISDにて、ウォルフガング・ルドルフ教授による大学デザインコース「旧北陸銀行ビルの再活用を考える」(英語タイトル「Reimagining the Old Hokuriku Bank Building」)が、選りすぐられたインテリア建築学科生9名の参加で始まりました。この14週間コースには、米国本校キャンパスでのデザイン調査および概念化作業、現地調査および文化交流活動のための井波への9日間研修旅行が含まれていました。


ウォルフガング・ルドルフ教授は、シラバス(講義概要)で本コースについて下記のように述べています。

「どの学生にも、プログラムの戦略および潜在的概念を探求するための機会が個別に与えられる。関係者たちの描く展望、プロジェクトの経済構造、対象構造物の持つ背景などを理解し考慮することは大切だが、本コースでは、学問の自由および革新性・独創性・創造性を推奨することを基本としている。「保存」の観点は、該当案において適切と考えられる範囲で重要視する。

本コースの目的は、調査データと関係者の描く展望に基づき、学生たちの創造性と探求心を原動力とした総合的かつ適応性のある再利用プロジェクトを開発することである。そのために、『日本国内同規模の自治体で採用できるような模範的で適応性の高い再利用戦略を築くこと』、『八日町通を活性化すること』、および『ネオクラシック様式の銀行ビルが持つ歴史的価値および利用価値を高め、財政圧迫による取り壊しを防ぐこと』を指針とする。」


本プロジェクトは、計画段階において、南砺市、井波地域づくり協議会, 井波観光協会, 井波美術協会、井波木彫協同組合、南砺で暮らしません課、および多くの地元住民たちからの支援を得ています。

新型コロナウイルス感染が1月に拡大して以来、日本から状況を見守り続けてきました。渡航に関する安全性が確保できないと判断した時点で、あらゆる渡航計画を中止することに決定しました。RISDが本コースを続行するために代替策として調査研究に必要な資料を日本から学生達に届けることにしました。それらの資料作成と地元関係者/タケトンボ社間の連絡調整に東京井波会中嶋勝彦副会長が多大な協力をしてくれました。



ニューヨーク州が緊急事態宣言を発令する数日前の3月12日、RISDキャンパスでルドルフ教授、学生たちと会う機会があり、興味深いデザインのアイデアについて話を聞くことが出来ました。学生たちの多くは日本に行った経験がなく、日本文化や歴史的建築物、さらには日本の歴史や井波の地域文化への興味と情熱のみを基盤としてアイデアが生み出されていました。想像がつくかとは思いますが、英語での資料や情報が限られており、実際に井波を訪れる機会もなくなってしまった状況で、この作業は決して簡単なものではありません。

私のRISD訪問からわずか一週間後に、米国東海岸におけるコロナ禍は急速に深刻化し、学生および教員たちの健康・安全を守るために地域の全大学の閉鎖が決まりました。学生たちは直ちにキャンパスから退去しなくてはならず、とりわけ外国人留学生にとっては、引っ越し先や帰国するための飛行機を見つける必要があり、大変な状況となりました。そして、3月30日、RISDは全コースをオンライン授業に切り替えました。

次にルドルフ教授・学生9名と話したのは、Zoomを使った遠隔でのインターネット上の授業となりました。芸術大学での学習には、対面交流やスタジオ(図工室)での共同作業などが重要な役割を果たします。しかし、「旧北陸銀行ビルの再活用を考える」コースは、米国・スイス・韓国・中国など世界各国にいる学生達との異なるタイムゾーンを結び、インターネット上で進められています。テクノロジーのおかげで、学生たちもこの新しい学び方に慣れていたようで、このミーティングでも生産性の高い対話と作業が実現できました。

コロナ禍によって中断されましたが、米国では春学期は5月末に修了します。非常に残念ですが、コース内容の変更は避けられず、重要な要素であった井波への文化体験研修旅行の実現は不可能となりました。しかし、学生たちは何事にも負けない強い姿勢で取り組み、この混乱と不安に満ちた状況の中でも素晴らしい創造性・俊敏性・粘り強さを見せてくれています。

来る数か月のうちに、井波の皆さまに学生たちによるデザインの完成形をお見せしたいと考えております。まだまだコロナウイルスとの闘いは続き、回復までの時間もかかるとは思いますが、持続可能な生活や地方創生、文化保存を目指し続ける重要性がなくなることはありません。本プロジェクトでの取組みによって、私たちが、井波と世界を繋ぎ、地域に新しいエネルギーやアイデアを注ぎ込むお手伝いをできればと望んでいます。


タム ミッキ 5.14.2020



(英語)学生のプロフィールなどをご覧いただけます。

Project HP:

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